2006年01月01日号

新年・現代の子供たち考


明治維新の立役者となった坂本龍馬は時代を超越して絶大な人気を誇っている。一国の進路を舵取りした風雲児らしく、そのイメージは豪胆にして爽快だ。だけども、幼い頃はひどい泣き虫で、おまけに不出来な子供だったという。あまりにも物覚えが悪く、8歳から通った寺子屋には2年と行けなかった。塾の師匠が「とてもあずかれない」と坂本家に申し入れて来たという話が伝わっている。


   さらに龍馬は数え年13か14まで寝小便が治らなかった。「坂本のよばあ(寝小便)たれ」と呼ばれ、家族は「あれは廃(すた)れ者になる」となげいたという。このひ弱な末っ子を擁護し、剣術の初歩を仕込んだのが姉の乙女だった。龍馬は剣術でめきめき頭角をあらわし、少年期が終わる頃に変貌した。まわりの目に萎縮し続けていた子供は一つのことに自信を持った時から、百八十度転換して大きな青年に脱皮したのである。


   蚕は桑の葉を昼夜なく食べ、次に眠ることを繰り返し、4回脱皮して繭を作り、成虫になる。幼虫はただただ食べ、そして眠るのだという。人間発達学の専門家によると、人間もまた、生まれてから大人になる過程で、ちょうど脱皮するかのように、正常ならば4度の発達段階を経て育ってゆくという。それぞれの段階で発達の力を自分の中で熟成させ、じっくりじっくり成長して花開く。


   面白いのは、龍馬の姉の乙女は、剣術馬術、義太夫から踊り、三味線まで諸芸に秀でていながら、炊事と裁縫はまるでだめだった。人それぞれに個性があり、人それぞれに才能は異なる。おどおどした出来の悪い「坂本のよばあたれ」が、並み居る秀才を尻目に日本をリードし、時代を変えた。人というものの可能性は本当にわからないと思う。画一的な大人の尺度を押し付けられ、追い立てられるように生かされている現代の子供たち。現代に龍馬が生きたとしても、その芽は早々に摘み取られてしまうのかもしれない。食べて眠って、そして遊んで、じっくりじっくり力をためながら成長するという、人間本来の機会さえ奪われつつある子供たち。せめて、正常な脱皮が出来る世の中に戻さなければ、と思う。


   あけましておめでとうございます。本年も「まんまる新聞」をよろしくお願い申し上げます。
―スタッフ一同―

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