2006年04月07日号

ベーチェット病①シルクロードを越えてきたぶどう膜炎


ぶどう膜炎は、眼球内でぶどう膜と呼ばれる虹彩、毛様体、脈絡膜に炎症が起こる病気です。これらの組織は眼球を包み込むように内側全体を覆っており、血管や色素が豊富なため一見「ぶどう」のような姿形をしています。これに一旦炎症が起こると網膜に障害を与え視力障害を起こします。更に炎症が眼球全体に広がっていくと硝子体、水晶体、角膜など眼球のほとんど全ての部位に悪影響を及ぼします。その結果、眼球に重い障害、たとえば網膜脈絡膜炎、続発緑内障、併発白内障、硝子体出血などを起こすこともあります。


   ぶどう膜に炎症を起こす原因はさまざまでその症状も多彩ですが、今回取り上げるのはベーチェット病と呼ばれているぶどう膜炎です。ベーチェット病は、目の炎症症状以外に全身症状として口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状など3つの症状を併せ持つ、慢性で再発性の全身を侵す炎症性疾患です。トルコのイスタンブール大学皮膚科ベーチェット教授が初めて報告したのでこの病名がつきました。しかし、古典を紐解いてみると、紀元前のエジプトや中国の書物のなかにベーチェット病を思わせる病気についての記録が残されており、大昔からこの病気が存在していたことを伺うことが出来ます。


   興味深いのは病気の起こりやすい地域の分布で、地中海沿岸から日本におよぶ、かつてシルクロードと呼ばれた地域に沿って発生頻度が高いことです。そのようなことから、別名「シルクロード病」ともいわれています。なぜこのような地域に限定されるのか、その謎を説く鍵はヒト白血球抗原(HLA)にあります。HLA検査により各人が代々先祖から受け継いだ遺伝的特徴が分かりますが、これを検査した結果ベーチェット病の患者さんにはHLA―B51という遺伝子を保有する率が高く、しかもこの遺伝子がシルクロードに沿って高率に分布していることが分かったのです。このことから、古代より長い年月を経て、物質ばかりではなくベーチェット病の遺伝子もシルクロードを渡り日本にもたらされたものと推測されるのです。

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