2006年06月02日号

カシミヤと砂漠化


朝起きると車がいやに汚れている。中国大陸から風に乗ってくる黄砂(こうさ)だ。過去30年の観測で、昭和63年(1988年)から増え始めた日本での黄砂現象は、2000年から急増。ここ数年は減っていたが、今年また目立っている。


   中国内陸部のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠、そして黄土高原地帯から巻き上げられた砂塵が偏西風に乗って到来する。恐ろしいのは黄砂の供給源となる砂漠が年々急速に拡大していることだ。森林面積が50%以上あった黄土高原地帯では、森林の乱伐や無秩序な耕地拡大で木がなくなり、風や雨で表土が流出、今では6%の面積しかないという。一方内モンゴル自治区では、カシミヤを生産するために山羊が急増した。


   哲学者の梅原猛さんは――西の文明は小麦農業と牧畜が生産の基本で、森を切って畑にした。畑が荒れると牛や羊を飼い、さらに荒れ地でも放牧できるヤギを飼う。最後にヤギが木の株を食べて全部枯れてしまい、砂漠になる。(朝日新聞社刊「梅原猛の授業」より)――という人為的な原因で砂漠が広がった歴史経過を報告している。同じ事が現代の中国でも進んでいる。「チャイニーズ・カシミヤ」は世界最高峰といわれるカシミヤ。中でも内モンゴル産が上質とされる。近年の日本をはじめとするカシミヤブームに乗ってカシミヤ山羊が増え、草原だった土地が、山羊に草の根まで食い尽くされて砂漠化している現状。


   カシミヤはこの山羊から刈り取るのだが、日本はその代表的な輸入国だ。カシミヤの利用が増えれば増えるほど、砂漠が広がる。その砂塵が風に乗り黄砂となって、物干し竿のカシミヤセーターの上に降り注ぐ。地球の深刻な砂漠化のひとつの側面が空から舞い降りる…のだ。


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