2006年09月29日号

虫の声


玄関先の花の鉢に、おそらく1匹だけ虫が住みついて、夕方近くから夜通し鳴いている。エンマコオロギだと思うが、フリリリリ…リリリ…と、その声は途中で途切れたりして、なんだか弱々しい。周囲の草むらに行こうともしないで、毎日毎日鉢の中で懸命に鳴くその様子が、健気でもあり少し哀れでもあって、どうも気になる存在になってしまった。「もう大分に弱っているんじゃないか」と行く末が気になってから、もう、半月以上にもなる


   すっかり中秋の風情で、透き通る夜空に月の光、星々の輝き、そして地にすだく虫の音が冴えわたる。「すだく」は、現代では「鳴く」意味で使われる場合が多いようだが、本来は「集まる」という意味合いだっそうで、漢字は「集(すだ)く」だと広辞苑などには出ている。虫の大合唱ゆえの言葉の変化なのだろう。


   ♪あれ、松虫が鳴いている…チンチロチンチロチンチロリン…「虫の声」というこの唱歌を思い出しながら、夜道を散歩する。松虫やスズムシ、クツワムシは北海道にはいないと本にはあったが、コオロギのコロコロやリリリリリ…、ウマオイのスイーッチョン、キリギリスのギ~ッチョンなどが、あちらこちらから聞こえる。ジィーッとかチリチリチリ…と、その後ろで鳴き続けている虫もいる。この鳴き声の一つ一つが何の虫かわかればもっと楽しいだろうけれど、秋の草むらは虫たちの激しい命の営みで満たされ、その中に身が包み込まれていく感じだ。


   玄関のコオロギのおかげで、今年は何年か振りに秋の虫の音に耳を傾けている。

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