2006年09月22日号

少年の目をしたYさん!


Yさんが当クリニックを初診したのは、4年前の正月、Yさん65歳のとき。喘鳴、咳嗽、呼吸困難などの症状が前年暮れに出現し、近医で治療を受けていたが良くならないとの詳細な経過をワープロで印刷して持参した。胸部の聴診で両側下肺に湿性雑音が聞こえたため胸部レントゲン検査を行った。心胸郭比が55%で軽度の心臓肥大、肺動脈の拡張も見られ、肺野の血管陰影が増強して両側下肺に胸水も貯留している。明らかな心不全。私の大学同期生が院長をしている糖尿病専門のAクリニックで治療中とのことで、本人の希望もあり情報提供書を添付して紹介した。


   Aクリニックから札幌厚生病院循環器科を紹介されて入院。最終診断は発作性頻拍症が原因のうっ血性心不全とのAクリニックからの連絡が入った。1年半後、その後も続く心房細動の治療を当クリニックで継続することを希望して来院した。Yさん、医療のことに詳しく、現役時代は医療関連の仕事に就いていたと思われる。

   先日、月に1度の定期受診後すぐにYさんの再来があった。「何事が起こったか?」と思って診察室に招き入れたが、始まった話は、何と!蝶のこと。このコラムに載せた「アケビコノハ蝶」の記事を読み来院したらしい。彼の庭にある山椒にはキアゲハ、人参にはナミアゲハの幼虫が成育すること、自室で幼虫から蛹になる姿を観察していること、私が見つけた幼虫は蛾の一種らしいことなどを話してくれた。


   私が小学生の頃、キャベツについた青虫を虫かごに入れて蛹になり、羽化するのを観察したときのことを思い出した。そのとき私も夢中になって両親に話をしたが、眼前で話してくれるYさんの目も、そのときの私の目と同じだったと思う。70歳になったYさんの「少年の目」を見ていると、生きている限り、自然の驚異に目を見張り感動する心を忘れてはいけないと、あらためて自分自身に言い聞かせた。


上戸彩 CD

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