2006年10月13日号

粟粒結核


診療を終えて、そろそろ帰り仕度をと思っていた矢先、常連客?のFさんから電話が入った。「ぜひ、先生に息子を診察して欲しい。もうすぐクリニックに着くと思う」とのこと。まもなく到着したI君、年齢は20歳台の後半、真っ黒に日焼けしたすらりとした好青年。


   訴えは「数ヶ月も続く空咳」…「咳は就寝前と朝方に多い?」との質問に「は、はい」、その後の質問は、後で考えると、私の誘導尋問?のようだったらしい。レントゲンの電源も落としてしまったので、後日に検査を行うこととし、「咳喘息?」と仮診断し、気管支拡張剤などを処方した。数日後、再来したI君、「少しは良くなったようですが、まだ咳がかなり…」と。レントゲン写真を撮影してビックリ、両側上肺から中肺野にかけての肺結核!


   胸部CT検査を行って更にビックリ、両側上肺に空洞を伴った病変、中肺には米粒から小豆大の陰影が、更にこうした病変の間に粟粒上の小さな陰影が下肺野まで散在している…粟粒結核?という病名が頭をよぎった。結核菌が血液に乗って全身に運ばれ、少なくとも2臓器以上に活動性の病巣が成立した病態で、肺野の広い範囲に1ミリ前後の粒状の陰影が無数見えられる。この粒状の塊(かたまり)は、結核菌とまわりの防御細胞とが闘っているもの。


   結核病床のある病院の呼吸器科に紹介したが、病床は慢性的に不足のようで、入院の必要がありそうな場合には、事前に連絡くださいとのこと。以前勤務していた旭川赤十字病院の結核病床の患者さんを担当したことがあるが、そのとき以来見た粟粒結核。間質性肺炎や汎細気管支炎などとの鑑別のため、喀痰検査を行ったところ排菌が認められた。3年前まで勤務していた会社で仲良かった同僚が肺結核に罹患したとのこと…このあたりが感染源か。標準的な結核治療により大部分は約6ヶ月ほどでかなり改善する。早く元気なI君の顔を見せて欲しい!

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