2006年12月15日号

かみしめ呑気症候群!!


A子さんは70歳代前半の女性。「突然、ゲップが出て止まらなくなる」と訴えて来院した。診察中も盛んにゲップを繰り返している。ゲップは医学専門用語で曖気(あいき)と呼び、胃内に入った空気が口に逆流してくる現象である。食後の満腹感を表現する象徴として漫画などで利用されている。誰でも食物を飲み込む際に多少の空気を一緒に飲み込むが、早食いの人ほどその量が多いと言われている。


   飲み込む空気の量が多くなると、ゲップが出て腹が張り、胃痛や食欲不振の原因になったりすることもある。こうした病的な状態を呑気症(どんきしょう)と呼んでいる。腹部の打診で太鼓を叩いたときような音(鼓音)が認められ、立位で腹部のレントゲン写真を撮影すると、胃や十二指腸、上部小腸に大量のガス像が観察される。A子さんの診察でも鼓音が認められ、レントゲン検査でも「腹中が空気だらけ」と言えるほど大量のガス像が観察された。


   こうした呑気症になる人に、しばしば精神的緊張状態やストレスに晒された結果、無意識に奥歯を噛みしめ、盛んにつばを飲み込む動作が観察される。こうした理由から、東京医科歯科大学の小野繁教授(頭頸部口腔心療科)によって、この状態を「かみしめ呑気症候群」と呼ぶことが提唱された。多量の空気を飲み込むこと(呑気)によってゲップ、腹部膨満感、食欲不振など消化管症状が出現するだけでなく、顎や首の筋肉の緊張状態が持続して肩こりや頭痛などの症状が見られることも珍しくない。


   A子さんの場合には、いくつかの複合的なストレスが呑気に関与していることが自他ともに分かっており、精神安定剤の一種である抗不安剤を処方して効果を得ている。本人は「点滴をすると安心し、ゲップを予防できる」と心底信じているので、その薬理学的効果は???であるが、患者さんの安心感を得るための有効な手段と思って点滴を行っている。

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