2007年04月13日号

舞い上がったTさん!!


この時節、入学試験合否発表や卒業式があり、それに伴う悲喜こもごもの交錯する時期である。わが家も次男が大学院博士課程を修了し、東京の某医科学研究所への就職が決まって慌しい。こんな折、患者さんを診察室に招き入れるため待合室に出たところ、Tさんの顔が見え、満面に笑みを浮かべた表情を見て「これは念願が叶った」と確信した。


   Tさん一家は開業まもなくからの常連客。Tさんの双子のご子息、1人は北大の文系学部に昨年合格した。もう1人は今年1浪して医科大学を受験…受験日の数週間前に私のクリニックを風邪で受診。センター試験も納得のいく成績だったそうで、患者―医師の関係を逸脱し、受験の心得や医師に必須の資質など雑談をした。


   Tさんを診察室に招き入れ、血圧を測定して一息ついた。待ちかねたかのようにTさんの口から「合格しました!」「先生といつもいろんな話をしているので、医者である面接官とも同じ気持ちで接することができたと息子が言っていました」と。Tさんが重役をしているワイン醸造会社の『雪摘み』を頂いた。このワイン、浦臼町鶴沼産ケルナー種のブドウ、初雪を待って収穫し、醸造したアウスレーゼとアイスワインの中間に位置する甘口ワイン。後日、ワインを口にしながら、私が大学に合格したときの親父の気持ち、息子たちが大学に合格したときの感慨に思いを馳せた。


   Tさんが診察室を出ると「先生、Tさんの足元を見ましたか?」と看護師長、「いつも冷静なTさん、靴をスリッパに履き替えていなかったんですよ」と。「そりゃ理解可能だな、俺も息子たちのときは同じように舞い上がったと思う」と私。数日後に高熱と全身倦怠感など風邪症状で来院したTさんの奥様にこの話をしていたら、背中を指でつつかれた。振り返ると「こんなときに冗談は禁句」との視線を放つ看護師長だったが、Tさんの奥様も具合悪さを忘れて爆笑した。

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