2007年04月20日号

やまびこ


そういえばずいぶん長く山彦に会っていないと、ふと思った。子供の頃、叫んだら返る“やまびこ”の声がうれしくて、山に向かって思い切り叫ぶのが好きだった。幼い頃は本当に誰かがこちらの声を真似て叫び返してくる気がしていたし、山の向こうに答えてくれる不思議な存在があると思うとうれしくて、夢中になって声を張り上げた。子供にはけっこうなストレス解消になっていたと思う。


   「ヤッホー」と叫ぶのは、ちょっと横文字風のしゃれた叫び方で、「オーイ」とか「キャー」とか「バカー」とか、「だれだー」とか、「ヤッホー」に引っ掛けて、「アホ、アッホー」とか、思いつくものを気ままに叫んでいた気がする。山彦はもちろん、山々に声や音が反響して戻ってくるのだが、山の神様が答えるものと想像して「山彦」、木々の霊の叫び返しと考えて「こだま(木霊・木魂)」と呼んできたものらしい。散歩人が通っていたのは秋田の山間の響中学校という学校で、今は無いが昔は響村という米代川のほとりにある村。山並みが重なる秋田杉の産地だから、ある意味、山彦やこだまとのお付き合いが深い土地柄だった。


   万葉集の大伴家持(おおとものやかもち)の歌に「やまびこの相響(とよ)むまで妻恋ひに鹿鳴く山辺に独りのみして」とあるそうで、“山彦が響きあうほどに妻を恋うて鹿が鳴く、そんな寂しい山のほとりに自分は(も)たった1人でいる”というような意味らしいが、1200年以上の昔から「やまびこ」と呼ばれ人々とともにあったわけだ。


   北海道は平野が広く身近に山彦との付き合いは薄いが、暖かくなったら山の中に、久しぶりに山彦に会いに行ってみようか。子供の頃のように純粋に思い切り呼びかけることができるだろうか。山彦は声を返してくれるだろうか。

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