2007年06月01日号

おかしな言葉


記事を書く仕事をしていると首をかしげてしまう言葉の使い方にいくつか出会う。そのひとつが「改正」という言葉で、一番最初は列車の時刻表を変える「ダイヤ改正」だった。「改正」だと従来の時刻編成に欠点があり、その悪いところを修正したというニュアンスになる。なぜわざわざ「改定」ではなく「改正」なのか、説明もないしどうもしっくりこなかった。


   この「改正」という言葉を一番好んで使用するのはお役所だ。とりわけ法律や制度を変える時には「改正」のオンパレードになる。税制改正(財務省)、学習指導要領の改正(文科省)、旅券法改正(外務省)、障害者基本法改正(厚労省)……すべてこの調子で、当然その裏には、従来の法・制度には欠陥がありそれを「正しく改めた」のだ、という姿勢を潜(ひそ)めている。国民に…というより、特定の“誰かさん”やお上(為政者)に都合のいい場合も多いだろうこの「改正」で、税金を搾り取られたり、仕事を奪われたりする下々は、お役所や政治家にちらつく欺瞞(ぎまん)の気配と不遜さがどうしても鼻についてしまう。


   「広辞苑」(岩波書店)には、《改正=改めて正しくすること》《改定=改め定めること》……とあって、「改定」の方がしっくりくる。ところが「大辞林」(三省堂)になると《改正=法律や制度などを改めただすこと》《改定=すでに定められていたものを改めて定めること》とあって、法や制度を変えるのは、誰が何と言おうとも「改正」で、正しいことなのだという用語使いになってしまう。政治や行政は民から委託されている職務だから謙虚であることが基本であって、その結果がわからない事を、これが正しいと押し付けるような傲慢(ごうまん)があってはならない。「改正」という用語はそぐわないのではないか。


   世の中は「改憲」だ、「護憲」だとずいぶん騒々しいが、気になるのは「憲法“改正”」という言い方だ。改正かも知れないし、もしかすると「改悪」かも知れないのに、言葉に敏感でなければならないはずのマスコミの報道ですら“改正”一辺倒なのだ。ちなみに、新聞記者の用語などの基準となる「記者ハンドブック」(共同通信社版)には、「改定」はあったが、「改正」という用語はどこを探しても見当たらなかったのだが…。

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