2007年06月29日号

小さな花


野の片隅にスミレが咲いて、今は忘れな草(勿忘草=わすれなぐさ)がほつほつとうす紫の花をつけている。たまに、淡いピンクの色も混じる。小さな小さな可憐な…花。そう言えば小学生のころ、忘れな草の花のような女の子が結構いたっけ。おかっぱ頭の、丸衿のブラウスかなんか着ている…そんなイメージ。決まって、衿には花の刺繍があったりした。毎日一緒に遊んでいたあの女の子たちの、笑顔や泣き顔や怒った顔が、今は不思議に忘れな草の花にだぶって、無性に思い出されてきてしまう。


   忘れな草は明治期以降の帰化植物だそうで、それが野生化して広まったという(日本の在来種には「エゾムラサキ」があるという)。花の名は「私を忘れないで…」という意味の英語名や(フォーゲット・ミー・ノット)ドイツ語名の訳で、少し悲しいヨーロッパの伝説が由来しているのだそうだ。――恋人ゼルダのために川岸のこの花を摘もうとした騎士ルドルフが川に落ち、波間に消える前に「私を忘れないで」と、この草花を恋人に投げよこした。彼女はこの花を生涯髪にさし、この可憐な花を「忘れな草」と呼ぶようになった――とか。


   野や道端や田んぼの畦(あぜ)に咲く小さな小さな草花が、いつの頃からか気になる存在になった。顔をよほど近づけないと見えないような、極小の花々。カタバミやハコベやスイバや、これから夏にかけてはツユクサが咲いて、蓼(タデ)のいろいろな穂花も咲く。できれば虫めがねかルーペで見てほしい。遠目では気づかない、息をのむようなあでやかで美しい、あるいはいじらしく可愛らしい花の姿が現れる。極小の花々は人の思いなどには少しの関わりもなく、独り堂々と輝くように咲き誇っている…。

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