2007年07月20日号

診察室で認知症を疑う


Aさんは、にこやかな笑顔とこざっぱりした服装の60歳代前半の美人。10日ほど前に定期受診をしたばかりなのに???と思いながら、レントゲンと心電図をディスプレイに表示した。診察を終えて「前回、診察した日に処方しましたよね」と言ったら、「あら、もうお薬が残っていないもの」との答え!そういえば、いつもの笑顔がなくイラついた様子で服装もチグハグ。


   Aさんが帰ってからスタッフに「Aさんってああだった?」と尋ねた。看護師長が「薬の服用方法を教えても、帰りがけに何度も尋ねるのよ」と。「そういえば、そんなことがあったな」と私。他の看護師が「心電図検査のときに気づいたんだけど、ブラウスを2枚重ね着していたのよ」と。受付からは「この数ヶ月、何度も支払いを終えたかどうか尋ねる」との情報も入った。


   認知症は、家族からの相談が診断のきっかけとなることが最も多い。だが、診察時の患者さんの言動が診断のきっかけになることもある。髪型や化粧の変化、季節にそぐわない服装などである。患者さんとの会話の中に時候や最近の話題、家族の消息などを散りばめておき、表情や受け答えを観察する。規則的だった定期受診がバラバラになることもある。妙だな?と思ったら家族から情報収集。


   Aさんの場合、夫と二人暮らしなので、Aさんが家に辿り着く前に夫に電話をした。半年前ころから物忘れが激しくなって何度か鍋を焦がしたこともある、化粧や服装に気を使わなくなって入浴も嫌うようになったそうだ。事情を話して一緒に来院してもらい、頭部CT検査や長谷川式簡易知能スケール検査などを実施した。CT検査では、年齢に比して海馬傍回や拘回、側頭葉の萎縮が目立ち、簡易知能スケールは30点満点で20点、四角柱の透視図を上手く模写できないなど認知症を疑う所見が得られ、更に詳しい検査のため中央区にある病院の物忘れ外来を紹介した。

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