「ありがとう」の効力
伯母は、何があっても「ありがとうございます」と手を合わせる人だった。散歩人が幼い頃、作業場が火災に遭った時も、泰然として「ありがとうございます」とやって周囲を、呆れさせた。
ここ数年、散歩人も同じようなことをするようになった。トラブルに遭遇した時にも「ありがたい」と思えるようになったのだ。「口に出して言うと、きっといい方に進んでゆくよ」と知人が教えてくれ、なるほど、それを心がけるようになってから物事がいい方いい方に転がっていくような気がするのである。
悪い事態が起こっても、「ありがとう」と言えば、ただむやみに悲観することがなくなった。なぜそういうことが起こったのか、自分に何が足りなくて、あるいは何を気づかせたくて起こったのか、口幅ったいのだが、それを試練として受け止められるようになった。原因が思い当たればそれを直す努力をすればいい。物事がわかりやすくなって、気が晴れやかになった。考え方がプラスに転ずる。
伯母と同じに、「ありがとう」が散歩人のおまじないの言葉になった。