2007年10月19日号

力関係


本道出身の世界チャンピオン・内藤大輔選手と、派手な宣伝とパフォーマンスで話題を集める亀田大毅選手の世界フライ級タイトルマッチがTBSで放映されたのを見て、ア然とした。試合は、内藤が3―0大差判定で王座を守ったのだが、あまりに無残な内容で、亀田側は内藤を「ゴキブリ」などと口汚く罵り、かなわないと見ると父親や兄が「急所を狙え、ひじで目を打て」などと指示、反則だらけの信じがたい戦い方をした。


   興行物ではあっても、厳しいルールの上に真剣勝負をするプロボクシングは、人々に信頼される権威あるスポーツだった。ボクシングを愛した歌人で演劇家の寺山修司は、その歌集「テーブルの上の荒野」で〈サンドバッグをわが叩くとき町中の不幸な青年よ 目を醒(さ)ませ〉と詠(よ)み、19歳で世界フライ級チャンピオンに輝き、バンタム級も制して2階級を制覇したファイティング原田(現日本プロボクシング協会会長)を懸命に応援した。原田は中学時代、生計の助けに米屋でアルバイトをしていてボクシングと出会った青年だった。ハングリースポーツと呼ばれ、人々は、飢えと貧しさ、どうしようもない宿命から脱出する夢をボクシングに重ねた。サンドバッグを叩く音は、社会の底、地方の片隅の若者に勇気を与え、明日に向けて鼓舞した。そういうスポーツだった。


   その神聖なリングを、日本最大のボクシングジムに所属し、大手テレビ局が肩入れするスター気取りの一家が前代未聞の恥ずべき行為で汚してしまった。妻と合わせて月収12万円という生活から抜け出そうとして戦い勝った内藤のファイトマネーは1000万円ほどだったという。負けた亀田のそれは10倍の1億円と報道された。スポーツなのに商売の力関係がこれほどまでに露骨に出る世の中に成り下がってしまっている。


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