2007年12月21日号

No.87


初雪が降った朝、病院前のナナカマドの実が沢山落ちていた。患者さんに見せて上げたい…と思った。全ての患者さんに届けて上げることはできないが、最近入院したばかりのA子さんが淋しがっていた事を思い出した。A子さんは両手の中に赤い実を宝石の様に持ち、目を大きく開けて「きれい…」と喜んでくれた。


   2人目はミチ子さんの所へ行く。365日御主人がお見舞いに来られて、職員のケアの良さと御主人の優しさに磨かれてミチ子さんはピカピカだ。回診前のひとゝきスヤスヤと眠っていた。しのび足でナナカマドを床頭台の上に置いて来た。暫くして部屋のドアが「トントン」とノックされる。「どなた?」と顔を出すと、御主人の満面の笑み、お皿の上には一口大のチョコレートが数枚乗っかっている。「妻の介護で疲れた時に食べるチョコ。会長さんにも一つ」との事。嬉しくて遠慮なく頂いた。甘くてハートにしみて行った。


   25年前、パウロ病院開院当時、私は自分の成すべき役が解らずに悩んでいた。しかし、目からうろこが落ちる日がやって来た。病棟を歩いていたら認知症の患者さんが不穏になり、師長の言う事も他の誰の言葉にも耳を貸さない。「殺せ!」「殺せ!」と叫んでいた。何が出来るという自信があった訳ではなかったが「まかせてみて?」と師長に目で合図をし、車椅子のおばあちゃん患者さんと院庭に出た。藤の花が咲き、マリア様の御像が私達を見ていた。「兔追いしかの山、いかにおはす父、母…」と歌っていたら「父、母」の箇所でおばあちゃんが涙を拭いていた。私を見上げて「かあさん!」と呼んでくれた。不穏な表情が消えていた。患者さんを抱いて私も泣いた。これでいいのだ…気負う事はない…この患者さんが私の原点です。


   「回診を読んでますよ」の声を沢山いただきました。有難うございました。感謝です。


ロイズ チョコレート

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