2008年03月07日号

豚はトン…納得!


グループホームの往診に同伴している薬剤師Nさんから、「入居者のT子さん、英語ができるんですよ」とのファックスが届いた。T子さん、夫が前立腺ガンで死去、貸家などの資産もあり金銭的には困らないが、物忘れがひどくなって70歳代半ばの3年前にホームに入居した。色白の妖艶な美人、夫の生前、家政婦まかせだった家事が不得手で、独居生活を続けることができなかった。


   ホームでの生活を観察すると、会話に「あれ」「それ」などの指示代名詞が極端に多い。頭の中で描く表象とそれを意味する言葉とが連結しないのだ。「昨日、見に行った雪祭りはどうだった?」と尋ねると、「楽しかったよ。《あの》……《それ》がとても大きくてビックリ。《あれの》……《それ》が……《あんなに》《あれ》だったの」といった返事が返ってくる。


   アルツハイマー病の患者さんには、物忘れや認知機能低下が認められる。限られたスペースの中でトイレや自室の位置を知る空間認知、積雪や時計を見て季節や時間を知る時間認知などの低下が顕著である。空間や時間を認知するため、正常人では五感から入力される事象を言葉に変換し認知していると思われる。しかし、認知症の人は事象から言葉への変換に支障をきたし、更に言葉から言語=表現への転換に滞りが見られる。言葉の喪失は、現実世界からの乖離へと進展する。


   ところでT子さんだが、往診のとき尋ねてみた。「英語で犬は?」との問いに「ドッグ」と。「猫は?」には「キャット」、「リンゴは?」には「アップル」と。先生はティーチャー、子供はチャイルド、学校はスクールと正確に答えたが、「それじゃ豚は?」との問いに、しばらく考えて「そうだ、トン」との答え。一同顔を見合わせ、一瞬おいて大爆笑。なかなかウイットに富む答え。その日の昼食はトンカツだった。


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