2008年05月23日号

介護に必要な距離感


ある認知症対応グループホーム(GH)の嘱託医が閉院し、ピンチヒッターを頼まれた。遠距離で時間的な制約もあることから、雪が降るまでという条件で往診を引き受けた。初めての往診日、いつも往診している別のGHと違った雰囲気に気づいた。妙に静かで整然…別のGHでは、ワイワイ、ガヤガヤ、いくつかの小グループを作り、昔話や口喧嘩まで、日常生活そのものだ。


   ところが、このGHでは、診察を受けるため居間の食卓やソファに腰かけているが、お互いの距離が微妙に離れ、話し声も聞こえてこない。生活臭を感知することができないのだ。最初は、初めての往診で皆が緊張しているせい?と思っていたが、そうでもないらしい。


   K婆ちゃんは98歳、早朝の下痢があり、栄養ドリンク服用の翌朝に起こるとのスタッフの観察で、前医から服用中止を指示された。長年飲んできたドリンク剤、服用禁止が不服らしく診察を拒否。自室に赴いてベッドに腰かけるK婆ちゃんと会話「ドリンク剤は飲んでもOKだよ」「そうだよね、あれしかないから」「ところで何歳?」「わたしゃ80半ばと思っていたら、とうに90過ぎとるのね」と。話がはずみ、居間に移動する…介護スタッフの介助法を見て唖然、前から両腕で身体を抱え込んで立ち上がらせ「さあ、歩いてごらん」と。この方法じゃ、誰だって歩けやしない。


   血圧測定中の耳元で吐息も感じる距離からの囁き、振り返ると男性スタッフ…気持ちが悪い。ここのスタッフを観察していると、介護に適切な距離感が保たれていない。密着し過ぎは鬱陶しさを、離れ過ぎは不安感や疎遠な感じを蔓延させる。次の往診日、K婆ちゃん、診察を終えるとスタッフとのミーティングで私が座る席の隣に先回り、「あんたのために、席とっといたよ」と。他の入居者たちも回りに集まり、賑やかな話し。スタッフの一人は「前は診察が終ると、皆、部屋に戻ったのですがね」と。


ウォークマン Sシリーズ

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