2008年05月30日号

ピロリ菌


散歩人の胃の中では、現在ピロリ菌退治が進行中だ。嫌々行った健康検診で胃カメラをのまされ、案の定引っかかった。ピロリ菌がいるから除菌しなさい、という。


   初めて胃カメラというものをのんだのは中学生の時だった。当時は1cm以上もありそうな太いのを口から突っ込まれるのである。町の医院で、そこにお嫁さんに来たばかりのきれいな女医さんだったが、やることは無慈悲だった。胃の中にカメラをぐいぐい押し込むのである。写真が上手く撮れないから、ゲップを我慢しろと、無理を言う。ゲップ、ゲップ、げぇ、げぇ、と顔がよだれと涙でぐしゃぐしゃになっているところへ、女医さんは、普通はこんなにげぇげぇしないんだけど…と追い討ちをかけた。男である。人には死んでも見られたくない姿というものがある。屈辱ものだと思った。以来、胃カメラと女医さんは苦手だ。


   それからの人生で2回、胃カメラをのまされた。その2回とも女医さんだった。いずれも同じような醜態をさらし、同じ屈辱を味わった。そして、今回。何の因果か、またしても女医さんである。ジタバタする中年男の苦悶を横目に、女医さんは、胃に潰瘍(かいよう)がありますね、悪性かどうか、ピロリ菌がいるかを検査するのに少し(組織を)取りますね、とあくまでも冷静に解説する。やっと終って惨めな気持ちで処置室から出たところに一緒に行った社員が、「声が外まで聞こえていましたよ」…ニヤニヤしながら言った。


   「ヘリコバクター・ピロリ」というのが正式名。日本では40歳以上の75%がピロリ菌を飼っているそうだが、潰瘍の原因になったり発癌物質とされている一方で、感染していても大半は病気にならないのだそうだ。で、1週間、朝昼2回、必ず抗生物質を服用するようにとの、きついお達しをいただいた。いい加減に薬を飲んで退治に失敗すると、薬に抵抗力がついて簡単に除菌できなくなるらしい。今、胃の中では、壮絶な戦いが繰り広げられているに違いないのだが、ただ、今まで一緒に生きてきたのになあと、少し寂しい気もしている。


ウォークマン Sシリーズ

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