2008年08月22日号

亜急性甲状腺炎!


A子さんは50歳代の美人、昨年末に当番医の時、右肋骨の下の痛みを訴えて以来の受診である。1ヶ月ほど前に気づいた前頚部の腫れと痛みを訴えて来院したとのこと。前頚部の腫れ具合に視線をやり、痛みもあると聞いただけで一つの病名が頭にひらめいた。それは、亜急性甲状腺炎。


   診察すると、甲状腺全体が腫れていて、ゴム毬のような弾力性を持っている。圧迫すると局所的に痛みを訴えるが、「痛む部分がその日によって変化する」とのこと…いよいよ亜急性甲状腺炎を疑った。この病気は、動悸や発汗過剰、手の震えなど甲状腺機能亢進の症状を伴うことが多いので、A子さんに尋ねたが、動悸や発汗の症状は自覚せず、多覚的にも手の震えも見られない。検査のための採血を行い、対症療法の消炎鎮痛剤と胃薬を処方した。


   亜急性甲状腺炎とは、あまり聞きなれない病名と思われるが、私たち第一線の医者が「しばしば遭遇する病気」とは言い難い。私が医者になって35年余りで3例目。月単位で経過する甲状腺の腫れと圧痛、痛みの部位が日々変化する、場合によって甲状腺機能亢進の症状が出現する病気である。対症療法的に消炎鎮痛剤、甲状腺機能亢進症状があるときはβ遮断剤を使う。決して甲状腺機能を抑制する薬剤を使ってはいけない。原因は、ウイルス感染と推測されてはいるが、原因ウイルスは特定されていない。


   A子さんの検査データは、私の診断を裏付けてくれた。高度の血沈亢進と炎症反応の強さを示すCRP強陽性、甲状腺ホルモンの増量(診察時には機能亢進症状の所見は見られなかったものの出現する頻度は高い)、甲状腺関連抗体は正常。そういえば、この病気、2例目に遭遇した患者さんの息子(私の親友)とつい最近、飲む機会があって慢性甲状腺炎の話をしたばかり…何という偶然なのだろうか。A子さん安心してください。1ヶ月ほどの経過で全快すると思われますよ。


加藤ミリヤ CD

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