2008年09月05日号

虎羅、その後


虎羅が死んだ…。近くの居酒屋でよく会うひとり暮らしのマッちゃんと、一緒に暮らす愛猫の雄ネコ・虎羅(こら)の話を春に書いたが(5月23日号散歩道)、そのすぐ後にマッちゃんが2度目の脳卒中で入院した。そして、6月のある日、近所の納屋で、猫いらずを食べたかして虎羅は冷たくなっていたという。


   マッちゃんが入院して居酒屋のママはすぐ見舞いに駆けつけた。野幌公民館の向かい側にあるその小さな店の常連客は、マッちゃんの命に別状のないことを聞いて安心したが、連絡するにも身寄りを知らないから、いろいろ気をもんだ。とりあえず気になったのは、突然マッちゃんがいなくなって家の中に入れなくなった虎羅のことだった。常連客の橋本さんが、入院した次の日からマッちゃんの玄関の前に、キャットフードを皿に入れて置くようにした。朝と晩に様子を見に行く。無くなっているときっと食べたんだろうと安心した。それが1ヵ月近く続いた。ある日、玄関に虎羅が死んだという張り紙がしてあった。「入院した日からうちで暮らしていたんですが、除草剤を飲んだのか、なめたのかわかりませんが、6月14日になくなりました。江別の火葬場へもっていきました。…ざんねんです。タナカ」。


   虎羅は時々家に帰って来て、玄関前に置かれたキャットフードを食べ、後は近所のタナカさんという家に寄宿していた。その家にはハナコという年上のネコがいた。タナカさんの奥さんは以前から虎羅を可愛がっていて、時々そのふくよかな腕に気持ち良さそうに抱かれて目を細めていたそうである。だから、虎羅がハナコに恋をしていたのか、奥さんの腕の中が良かったのかは、わからない。張り紙は、玄関先に毎日置かれているキャットフードを見て、心配している人がほかにもいるのだろうと、その奥さんが貼ったのだった。


   奥さんに会って事情を聞いて、ママさんも橋本さんも安堵した。路傍に迷うこともなく、お弔いまでしてもらって、思ってみれば幸せな一生だったのではないかと、つくづく語り合った。自分たちだけでなく気にかけてくれていた人のいる世間というものもうれしかった。ただ、マッちゃんにだけは知らせないでおこう…と申し合わせている。


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