2008年11月21日号

成人の百日咳


Aさんは40代後半の女性、1ヶ月半以上も続く咳を訴えて来院した。最初、風邪と思われるような症状があり、そのうち発作的に出現する咳だけが残ったそうだ。咳は日中でも見られるが、特に夜間に強く、咳発作のため不眠症状にも悩まされるようになった。Aさんにはアレルギー性鼻炎の既往もあり、以前から風邪をひくと咳だけが長く続く傾向があって咳喘息との診断でステロイドの吸入療法を行ったことがある。


   今回も同様の病態と判断して、ステロイドと長時間作用型気管支拡張剤の混合吸入薬を処方した。しかし、以前には即効したこの薬剤は無効…セフェム系抗生剤や鎮咳剤なども処方してみたが、効果が見られない。Aさんが来院すると診察室に座っていても分かる程の特徴的な痙攣するような咳である。「痙攣性」「咳嗽発作」という2つの言葉がヒントとなって「百日咳」という診断に至った。普段、ほとんど診ることのない小児科の領域の疾患である。


   百日咳は、グラム陰性桿菌の百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染症で小児期に多く見られる疾患である。WHOの報告では、世界の患者数は年間3000万人程度で、死亡率は1~2%。わが国では乳幼児期に三種混合ワクチン(DTaP/ジフテリア・百日咳・破傷風)として接種が義務化されているため著明に減少したと言われている。だが、最近になってワクチン接種の効果が薄れた成人の百日咳増加が問題となっているらしい。


   Aさんから採血して百日咳菌抗体の検査を行ったところ、明らかな抗体価の上昇が見られた。Aさんの場合、百日咳を疑ったときから、百日咳菌に有効と言われているマクロライド系抗生物質を処方した。2006年以降、厚生労働省は全国の小児感染症の定点(3000医療機関)を設けて感染の広がりを把握しようとしているが、このような小児科領域だけの定点把握だけで百日咳の根絶は難しいようだ。


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