2009年04月10日号

娘の旅立ち


4月の初め、18の娘が東京に発って行った。子の巣立ちであるから父親らしい気の利いた言葉の1つでもかけようと考えた。男はみんな狼と思えだの、いろんな誘いがあるから気をつけろだの、周辺がいろいろ言ってくれるから出番はあまりないのだけれど、ひと言ぐらいはあった方がいいだろう。…前の晩は、「大丈夫か」「うん」「じゃ、しっかりな…」くらいにしておこう。朝、出発の時には「達者でな」とでも声をかけて、あっさりとすますことにした。


   孫娘の顔を見に来ていた母親が、「親は死ぬまで子供が心配で、余計なお世話でも心配なもので…」と、もう初老に近い頭が禿げ上がった息子に向かって言った。蝶よ花よと…育てても、悪い虫でもつかないかと心配し、そんな気配が無いなら無いで、今度は(嫁に)行き遅れないかと気をもんで…親の心配というのは身勝手で困ったものだ――と、昔、年頃の娘を持つ先輩にこぼされたことを思い出す。せめて人並みの幸せをと神仏に拝んでも、時に泥田に足をとられる事もある。例え泥にまみれても、生きてさえいてくれればと思うのもまた親心~、と酔いが回った先輩は名調子になった。


   …で、出発前の晩。先日まで、ストーブの前でトドのように2頭一緒に丸まっていた母娘が、スーツケースを前に騒々しい。「あんたはなに考えてんの!」母トドが叫ぶ。「んなこと言ったって~」子トドがふくれる。何事かと見れば、絵本のキャラクターに似たクッションがボンとスーツケースの半分を占めている。それが無いと眠れないと言うのだ。…結局「大丈夫か」と聞くのは止めた…。朝、やはり何だかんだと騒がしい。先に出社する散歩人は、意を決して「じゃ、達者でな」と声を出した。が、それも騒々しさにかき消された。知らん顔の娘を後に、車の中で♪わ~らにまみれてヨー育てた栗毛~…オーラオーラ達者でナ、オーラオーラ風邪引くな…と、せめて三橋美智也の唄を歌った。


   ま、ともかくも、顔を上げて前を見て、毅然(きぜん)として生きて行ってくれれば…と思うのである。これも親心…。


ブルーレイ レコーダー

トラックバックURL:

« 俗物数寄者の仏像彫り! | TOP | 細胞から病気を治す医薬品の話No.202 »

[PR]SEO対策済みテンプレート