2009年04月17日号

ふるさとと、春のうた


♪春が来た、春が来た、どこに来た。山に来た、里に来た、野にも来た。…花がさく、花がさく、どこにさく。山にさく、里にさく、野にもさく。…鳥がなく、鳥がなく、どこでなく。山で鳴く、里で鳴く、野でも鳴く……。

明治の終わり頃から長く長く歌い継がれてきたこの文部省唱歌は、長野県から出た高野辰之という人が作詞し、鳥取県出身の岡野貞一という人が作曲したといわれている。春になると童心に返るのか、ぽかぽか陽気と明るい青空に心が弾(はず)んでくると、ちょっと口をついて出たりするのが、この「春が来た」という歌と「春の小川」なのだが、それにしても、人々が心に思う“春”の風景と希望がこの短い歌に余すところなく描かれているような気がして、本当にすごいなあ、と明治の頃の先達の仕事に舌を巻いてしまう。


   高野辰之作詞、岡野貞一作曲というこの2人の仕事とされているのは、ほかに、♪は~るの小川はさらさらいくよ~の「春の小川」や、♪菜のは~な畠の、入り日うすれ~の「朧(おぼろ)月夜」、♪うさぎ追いし、かの山~の「故郷」(ふるさと)、♪秋の夕日に、照る山もみじ~の「紅葉」(もみじ)、♪白地に赤く、日の丸染めて~の「日の丸の旗」……などがある。心のふるさとのような、かけがえのない歌ばかり…心にしみ入る。そういえば、父親が死ぬ前の病床で涙ながらに唱歌ばかり歌っていた、と母親が言っていた。思い出されるのは、子供の頃のことだったのだろう。


   冬も後半になると、子供たちは春の訪れを心待ちにした。雪が消えると、ほかほかと温かそうな土を踏む感触がうれしくて、土が出ているところや、野の枯れ草の上を選んで歩くのが、楽しみだった。しっかりした大地の上に立つ安心感を、幼心にも強く感じていた思いがある。ようやくほんの少し土が出ると、ビー球や釘さし(陣取り)やカン蹴りをしに外に飛び出した。小川や水たまりはおたまじゃくしやらアメンボやらでにぎやかだった。


   やさしい自然の中の、やさしい春だった…。


イクラ

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