2009年06月26日号

おにぎりの季節


学校から帰ると祖母が両手いっぱいに握る大きな握り飯を作ってくれた。散歩人の在所の秋田ではおにぎりのことを「だま」と呼ぶ。…で、中に入れるものなんて何もないから味噌をまんべんなくぬって、軒先に生えるギボウシの大きな葉っぱにドンと包んだ“ミソだま”を手渡され、それを手に外に飛び出す。味噌だけの握り飯に、空きっ腹がこの上もなく甘美に満たされて行く…。


   こうした育ちのためなのか、夏の初め若葉が風にきらめく頃になると、なぜか「おにぎりの季節」だと思ってしまう。握り飯にナスの1本漬けなんかとお茶があれば幸せ気分。青葉若葉のそよ風に吹かれながら野原の中で広げれば…ああ、生きてて良かったなあ。空が青いぜ…くらいの幸福感に浸(ひた)れるのである。ほっ、とため息をついてかじる米の飯の甘さ、口の中にじんわり広がる塩鮭のほのぼのとした味わい…。


   焼いた塩鮭の残りをほぐして鰹節と白ゴマと醤油とをあえて入れるのが好きだし、筋子もいいし、タラコは焼いたのも、生もいいし、明太子もいいし、山ワサビやら、みんなで海苔とごはんと、思い思いの具と漬物を用意して、事情が許せば炭火の焼きおにぎり…。子供も一緒になって小さいおにぎりを好きに握って食べるおにぎりパーティーというのもずいぶん楽しい。


   思えば、ほんのりピンク色に染まってつややかに光る祖母や母のおにぎりを握る手のひらが好きだった。おにぎりの美味しさというのは、実はあの手のひらの味わいではなかったか…そんなことも、ふっと思うのである。


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