2009年07月17日号

夏の喜び


夏が近づくと待ちきれずに掬(すく)い網を持って川に行った。山の上の集落で、途中に落差の大きな滝があったから、イワナや鮎やヤマメは登ってこれず、ウグイに似たじゃっこ(ツラランズと呼んでいたのだが、語源は不明)しかいない小川だった。小魚を“じゃっこ”と呼んだ。じゃこ…雑魚(ざこ)である。竹を弓のように曲げて網を張った形の掬い網を持って、川に行く。ほんのヒザ上くらいまでの深さで、川岸がせり出し少しえぐれて魚が隠れやすそうな場所を狙って、網をぐいぐい押し入れたり、片手で上流に網を構えて片方の足で魚が隠れていそうな所をかき回して網の中に追い込んだりする。


   バシャバシャと魚を追い込んで網をすくい上げる時の興奮…。数cm~10数cmほどの大小の雑魚、どじょう、透き通った小さなエビ、水カマキリ、トンボの幼虫のヤゴ……時に腹部に不気味な赤いマダラ模様のあるアカハラ(イモリ)が入っていたりして、悲鳴が上がる。その程度の“漁獲”でも10歳かそこらまでの子供たちにとっては大漁で、家に持って帰ると祖母がおうおうと喜んだふりをして汁の実にしてくれたりする。


   川底に、夏の日差しが光のゆらめきの紋様を描く。水面をリズミカルに渡り歩くアメンボやくるくる回るミズスマシ。時折ヘビやカエルがスルスルと泳ぎ渡って向こう岸の藪(やぶ)の中にするりと姿を消す。そんな様子を子供たちは息を潜めて見つめている。一瞬の静寂の後、小さな闖(ちん)入者たちはまた網を入れて川の平和を乱す。


   今でも、川を見る時に無性に網すくいをしてみたくなったりする。子供たちにやらせたらたまらないだろうな、と思う。もうできないのだろうか?…夏の日のあの喜びは伝わらないだろうか…。


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