2009年08月21日号

No.107


2泊3日、母に逢いたくて釧路へ行って来た。特急で4時間半…宿泊先は窓から眺める景色が好きでプリンスホテルと決めている。14階の部屋に案内されて、真っ先に窓から海を見た。海はいいなあー、大好きだ。鴎が岸壁で群れて鳴いている。スカイブルーの空には刷毛で掃いたような白い雲、水平線の彼方には襟裳岬が見えている。ポンポン船が波に漂っていた。瞬くまにタイムスリップして髙校まで過ごした思い出のフィルムが回り始めた。父の事、早逝した弟のこと、懐かしいあの友、この友、否々、こんな事はして居れない。まず清(きい)さん、母の所へ行こう。


   施設のホールには入居者さんが賑やかに思い思いの姿で集まっていた。清さんは?と探したが集団の中にはやっぱりいない。母の部屋へ直行だ。戸を開けて「お母さん」と呼ぶ。母はベットの上にポツンと腰かけていた。たずねる度に母の部屋は荷物が整理されて、本が好きだった筈なのに本棚が片付けられ、鏡台はあるが化粧道具がなにもない。「ナンデヤネン?」と思わず私。お土産に買って来た真っ白いセエターを母に着せた。襟元と袖口に光るビーズが気にいって「綺麗!」と母は喜こんだ。私のコンパクトを開いて母に化粧をする。童女のように素直に身をまかせていた。涙腺の弱い私の目から涙がこぼれてきた。お茶を運んで来てくれた職員さんが「あらあ、吉井さん綺麗!」とほめてくれた。母は「そうですか?あなたも綺麗ですよ」とお澄し顔で答えた。「ウフッ!」おかしくて思わず私は笑ってしまった。母の心の中にはプライドが残っている。人様の前ではしっかりしようと思っている。滞在中、「修子」と名前で呼んでもらえなかったけど、そんな事はもうどうでもいい。みんな忘れていいんだよお母さん。また逢いに来るからね。


   行きはよいよい、帰りはこわい。夜汽車に揺れて涙が溢れてきた。


インテリア・寝具・収納

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