2009年08月07日号

「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の街」


漫画家のこうの史代さんが描いた「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の街」(双葉社刊)という本に出会った。映画にもなって反響を呼んだ作品だが、読んだことはなかった。


   物語は昭和30年(1955年)のヒロシマを舞台に始まり、昭和62年を経て平成16年現在まで、被爆した家族3世代の、運命と心の移ろいと生活の情景を、静かに淡々と追う。そのひとつひとつの情景が美しく、けれどもあまりに残酷で、心に突き刺さる…。被爆後、明日がどうなるかわからない命の不安と深刻な後遺症と、後遺症の不安から結婚することもままならないさまざまな形の差別とを背負って、世間を前に口を閉ざして生きてきた人々…。


   8月6日午前8時15分ヒロシマ。3日後の8月9日午前11時2分ナガサキ――アメリカという国が落とした原子爆弾は広島14万人以上、長崎7万数千人以上とされる非戦闘員の一般の人々を一瞬のうちに殺戮(さつりく)し、さらにまた現代に至るまで何年もかけて何倍もの命を奪い去って来た。


   デザイナーの三宅一生さん(71歳)が広島の被爆者であることを告白し、オバマ大統領に広島を訪れるよう呼びかけた。自分が被爆体験を語らなければならないという責務をここに至って強く感じたためだという。三宅さんが口を閉ざして来た理由…この本を読んでその苦しみにごくごくわずかでも触れられたような気もする。

   被爆後10年、「夕凪の街」の主人公の女性は恋が成就した途端、健康だったはずが黒い血を吐いて23歳で命を奪われる。死の床で思う…「嬉しい?10年経ったけど原爆を落とした人は私を見て『やった!またひとり殺せた』とちゃんと思うてくれとる?」……ひとりでも多くの人に読んでほしい。


コブクロ CD

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