2009年10月23日号

やすらぎ地蔵展


午後5時に診療を終え、タクシーを呼んだ。妻と看護師長と一緒にJR新札幌駅に着き、電車に飛び乗った。今日向かうのは北広島駅、駅前の芸術文化ホールで開催されているMさんの個展を見に行くためだ。Mさんは昨年8月から当クリニックに通院している61歳の女性、定期受診の日に診察室に並べてある木彫を見て「先生が彫ったのかしら?」と。半年ほど前から始めた仏像彫刻だが、イメージするようなものが出来なくて悩んでいると答えた。


   Mさんが45歳の時、ゴミ捨てに行くのもつらくなる前胸部痛が出現した。そのときの症状を詳しく尋ねると、典型的な不安定型狭心症である。心臓の筋肉に栄養や酸素を供給している冠状動脈に重大な異常が出現し、多くは早急に手術を必要とする。受診した循環器専門病院に即入院、冠状動脈のバイパス術を受けた。大きな病気の経験がないMさん、もどかしいリハビリのストレス、友人の勧めで写経を始めた。


   地蔵は「お地蔵さん」などと呼ばれ、釈迦の入滅後、弥勒菩薩が出現する前に「六道を輪廻する衆生を救う」菩薩とされている。わが国では浄土信仰の影響で、水子供養や賽の河原で責められている子供を救ったという民間信仰など子供と関係することの多い仏様だ。いま私が彫っているのは地蔵菩薩なのだが、Mさんが「お地蔵さん」という言葉を使わなかったことを考えると、私の彫刻は地蔵菩薩には見えなかったのだろう。


   写経を始めたMさん、余った墨汁を「もったいない」と思い、それを使って「お地蔵さん」を描き始めたそうだ。Mさん本人が展示作品を案内してくれたが、Mさんの描いた「お地蔵さん」、多くは童子の顔をしたものだが、本人が『やすらぎ地蔵』と名付けただけあって、ほのぼのとする作品ばかりであった。自ら手術を契機に変身したと語るMさん、「こころ」が宿る心臓の手術はMさんの「こころ」をも変えたのだろうか?


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