2009年12月04日号

むかーし、ご先祖様が…


むかし、女のほいと(秋田の在所で乞食のこと)が来た時に、ご先祖が薄情に追い払った。実はこのほいとは仏様の化身で、その因果で子孫が金に困ることになった。……母親が、何で家の“かまど”が代々苦しいのか、に悩んで町の“神様”(イタコなど霊を降ろしたり、悩み相談に乗ったりする霊能者をカミサマと呼んでいる)に相談したら、そういう風に言われて、だからお前たち息子らの生活がなかなか楽にならないのも、こういうことがあったからだと、かわいそうにご先祖様はすっかり悪者にされてしまった。


   家の生活経済のことを「かまど」というのは、昔、煮炊きする竈(かまど)の数を家一世帯にかぞえて課税の単位としたことから独立生活を行う一家をいうようになって、分家は「かまどを分ける」で、破産は「かまどを返す(引っくり返す)・破る」…というふうに使った。明治の中くらいまで少しは大きかったかまどがだんだん苦しくなって、父親の時代にはそれを少しでも取り戻そうとしたけれど、奮闘努力の甲斐もなく…苦しさは続いた。


   母親は、頑張っても楽にならない訳(わけ)を何かに求めたかったのだろうが、さすがに“神様”は偉いもので、それはあなた方のせいではないよ、たまたまご先祖にこういうことがあったためだと、遠い先祖のせいにして気を楽にさせ、だからこれからも人を見くびることなくどんな人でも大切にして、子供たちの代も一生懸命に精を出して働けば、きっと良くなる…と、生きる指針と将来への希望まで与えてしまった。…見事である。


   で、ことあるごとにため息混じりでこの逸話を聞かせられてきたものだから、先祖も自分も理財の才覚がないのだと内心気がついていて、フフンと聞いているに過ぎないのに、心のどこかで少しは信じている。どこに仏様の化身が紛れ込んでいるか、油断できないのである。…であるし、だいたい甲斐性がないのも俺のせいじゃない…。それはね、むかし女のほいとがね…と、家のカミ様に説明しようとしたら、ひっぱたかれてしまった…。


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