2010年03月05日号

ああ、放浪記…


「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」……林芙美子(昭和26年没、48歳)という作家が好んで色紙に書いたあまりにも有名な詩なのだが、芙美子の書いた本に、散歩人には愛おしくて抱きしめたくなるような大切な一冊がある。「放浪記」という日記仕立ての自伝的作品。


   林芙美子は、土地土地をさすらって旅商いで食いつなぐ養父と実母のもとで、転々と行商して歩くその日暮らしの少女時代を送ったという。極貧の中、15歳の年に尾道(広島県)の女学校に進学、夜と休日に働き学費を稼ぎながら卒業して上京。しかし、食い詰めながらの生活は変わらず、露天商、行商、下足番、女工、事務員、そして、酔客相手の女給と、身を売る一歩手前まで世間をさすらい男運の悪さにまた泣きながら、昭和5年(1930年)、27歳の年にこの「放浪記」がベストセラーになるまで、あがくような、ぎりぎりの青春を生きた。


   「放浪記」には、その生き様が赤裸々に描かれる。女学校で文学と出会い、その後を生きる支えになった。どん底が続くのに、どこか明るくて強い、知的向上心と生命力…。素っ裸で、泣きながらでも真っ向から運命に向き合っていく、不器用な真正直さ。だから、読んでいても救われる思いがする。


   森光子さんの舞台「放浪記」の5、6月公演が、89歳になる森さんの健康上の心配から中止になったという。一度だけでも観たいあこがれの舞台だった。来年の公演の実現を祈るように待ち焦がれている。


嵐 CD

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