2010年04月16日号

完全房室ブロックと認知症


Gさんは92歳の女性。昨年春までは独居生活をしていた。一日中ボーッとボンヤリしていることが多くなっていたようだ。ある日、転倒して起き上がれなくなり、電話で息子さんに連絡。駆けつけた息子さんは、Gさんを整形外科病院に運んだ。


   レントゲン検査を受けたが、幸いに骨折もなく打撲との診断で入院。リハビリ室に出向く約1時間以外、ベッドで過ごす日々。3ヶ月後にはリハビリを拒否するようになった。夜になるとナースコール・ボタンを何度も押し、ベッド柵に掴まって立ち上がろうとする立派な《問題老人》に…向精神薬までが処方された。《老年性認知症》との診断名が付けられグループホームへ入居を勧められた。


   完全房室ブロックという病気がある。心臓は洞結節と呼ばれる部分から「収縮しろ」という命令を発し、その命令を心筋全体に伝達して収縮を繰り返している。その伝達経路の障害がブロックと呼ばれる。多くの場合は無害だが、完全房室ブロックは、いつ心停止が起きても不思議はない危険な不整脈、アダム・ストークス発作と呼ばれる失神発作を繰り返し、しばしば「呆け」と間違われる。


   グループホームに入居したGさん、往診時の血圧測定で脈拍数が1分間に40前後と少ないのに気づき、心電図検査…明らかな完全房室ブロック…直ちに新札幌循環器病院に連絡し、ペースメーカーを装着した。退院してホームに戻ったGさん、家族も「整形外科に入院する前よりも元気」と言った。退院後の往診時、目の前に置かれた自分のカルテの病名欄の先頭に書かれている「老年性認知症」を見て、「これ、私の病名?」と。機転をきかせた看護師長、「この病名の前の赤鉛筆の印、これは疑ったけど違ったとの印なの」と。実際はコンピュータに入力済みの印なのだが…。続いて記載された完全房室ブロック、骨粗鬆症まで正確に読むGさんの姿を見て、「認知症?」と問い返した。
2010-04-16 00:00:03


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