2010年07月16日号

失われた闇、そして…


NHKの「龍馬伝」や「タイムハンター」という番組が気に入っている。時代考証にこだわり、汚れた顔、建物、行灯(あんどん)や灯火皿の火だけに揺らめく夜の明かりとそれをおおう闇、髭面や髪の生えた月代(さかやき)、乱れたチョンマゲ…その時代に生きる人本来の暮らしの情景が再現されていて興味深い。


   昔日の闇の深さの恐ろしさ、星明かり月明かりのありがたさが、山奥育ちの散歩人には少し記憶に残っている。子供の頃、闇はお化けやら物の怪やら何かが潜む、畏(おそ)れ敬うしかない世界だというのが無意識の実感としてあった。それはもう神仏の境域だから、悪い心や行いがあればとり殺されるとなぜか思ってしまうのだった。闇に立ち向かうには、悪いことはしていない、恐れることはない…という潔白と善心を、神仏に必死に示すしか手立てはなかった。で、顔を上げて堂々と歩こうとするのだが、それでもやはり恐しく、走り出すしかなかった。


   蝿もいない蚊もいない、排泄をしても見ることなく水で流す…汚いもの嫌なものをことごとく排除してしまう今の世の中は、生き物が生きる本当の姿におおいをして表面だけの快適だけを追うあまり、人の本質から離れてしまっているような気がする。


   闇もなくなって、心の恐怖と向かい合うこともなくなった人間。便利になればなるほど、人は自分を見失って行くようで気にかかる…テレビを見ていて、そんなことをふと思った。


加藤ミリヤ CD

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