2010年09月03日号

見えているものが見えなくなる


私のクリニックも開設10年を過ぎたので老朽化が少しずつ目立ってきた。毎日の掃除の他に、年に4回は清掃会社に委託して大掃除をしているので室内の汚れはさほどでないが、外壁は塗装の剥がれも目立つ。だが、外壁は大家さんの責任なので手をつけることができない。待合室と診察室の壁と天井の張替え、処置室の天井の補修を行うことにした。


   定期通院しているSさんが内装工事会社を経営していることを思い出し、Sさんに発注した。さっそくスケールや見慣れない機器を持って見積りに来てくれた。後日、見積書を見て…何か妙だ…・宛名が上野内科クリニック・上野院長様と。改まって「私の名前は島村和夫と言います」と名刺を差し出した。Sさんは、ずっと上野内科クリニックに通院して上野先生の診察を受けていると思い込んでいたらしい。本人も含めて皆で大笑いした。


   人間は思い込みや先入観があると、視野に入っていても見えていないことがある。日常診療でもレントゲン写真や内視鏡検査をしているとき、何か大きな変化があると、それに視線が集中して、そのすぐそばにある目立たなくとも重要な病変を見逃してしまうことが稀ではない。だから少し離れて全体像を観察し、次に全体をくまなく観察し、最後に気づいた変化を詳細に観察する必要がある。


   先日、インターネットのニュース欄で「草地に遺体」と書かれていたのを「墓地に遺体」と読み違った。「遺体」という文字が「墓地」を連想して「草」が「墓」に見えたのだ。Sさんも「上野幌内科クリニック」の中から見覚えのある「上野」「内科」だけが目に入り、「幌」が抜けて「上野内科クリニック」と読み、医院名から上野先生と連想したと思われる。ともあれ、今回の補修でお世話になったSさんのきめ細かな配慮のおかげで、待合室や診察室が明るくなり、来院してくれた方も少し良い気分になれると思う。Sさん、私の名前は島村和夫です!


ダイエットクッキー

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