2010年09月10日号

手術室のカンノンサマ…


眼病があって、右目を手術することにした。白内障などで行う「水晶体再建術(+眼内レンズ挿入術)」という手術。


   「左の目に何かされそうになったら、『右』ですと必ず言ってくださいね」。散歩人の右手にピンクのリボンを巻きながら、年配の看護婦がちょっと恐いことを言った。手術台とおぼしき椅子に体を固定される。いよいよか…と緊張する。途端に、他人(ひと)様には言えない部分がかゆい。もぞもぞ手を下へはわせたところへ…「体を動かしてはだめですよ。言ってくださいね、こちらで掻(か)きますから」…言えるわけないじゃないか、こんなところ…。


   右目の部分に穴が開いた布で顔をおおわれる。穴のまわりに接着剤でも付いているのか、右目のまぶたが固定されて、瞬(まばた)きの心配がなくなる。見えるのは手術灯の強い光りだけで、そのおかげで何をされているかもわからない。麻酔の目薬が効いて痛みもなく少し安心した。…と、先生がボソッとひと言「このメス切れないなあ」。耳元で言われると、あまり気持ちの良いものではない。ひじ掛けを握る手に少し力が入った。


   緊張した手を、スッと優しく包んでくれる温かい手があった。不安が和らいだ。救いの手…地獄で仏・暗夜の灯(ともしび)・闇夜に提灯(ちょうちん)・カミサマ・ホトケサマ・カンノンサマ・マリアサマ…若い女性の手と思われるその柔らかな手に、思いつく限りの賛辞を捧げた。ただ一方で、握り返したりしたらやっぱりいけないんだろうなあ…などという、不埒(ふらち)な思いも頭をかすめた。


   手術台を降りる時、見える左目で若い看護婦を探しながら、手を握ってくれて助かったと、誰とはなく礼をのべた。「手術中は不安ですからね」と、にこやかに答えてくれたのは、先のご年配の看護婦さんだった…。さすがは、白衣の天使。ありがたさと恥ずかしさに、思わずつまずきそうになった…。


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