2010年09月17日号

多剤耐性病原菌


抗生物質が効かない細菌感染症が問題となっている。ひとつはT医大で確認されたアシネトバクターと呼ばれる細菌で、もうひとつはインドで確認されたNDM―1という遺伝子を持った大腸菌である。前者については病原性(人に病気を発症する能力)が弱く、病気のために免疫力の低下した人にとって脅威であるが、普通に日常生活をしている人への感染の危険性は少ない。


   だが、後者については耐性遺伝子が染色体DNAとは別のDNAプラスミド上にあり、細菌の種を超えて伝搬する可能性があって対策の困難さが懸念。今回、我が国で見つかったNDM―1を持った大腸菌は、インドに渡航歴のある男性から昨年検出され、栃木県のD医大で確認、他の人への感染も見られずに回復、退院したとのことである。


   人類の歴史は、細菌など病原体との戦いの歴史でもある。1935年にドイツのゲルハルト・ドマークが染料=プロントジル(サルファ剤)に抗菌作用を見つけ、細菌と化学薬品との戦いが始まった。その後、フレミングが1929年にアオカビから発見し、ワックスマンが抗菌作用を確認した抗生物質=ペニシリン。当初はこれが人類と細菌との最終戦争と思われた。


   多くの細菌感染症は、抗生物質によって劇的な効果が見られ、国民病と言われていた肺結核も激減した。だが一方で細菌と人類の新たな戦いが始まる。細菌は抗生物質に対抗する手段を遺伝子として獲得し、人類はそれに対抗する新たな抗生物質を自然界から探す。この戦いの中、医者になった当初に常用していたクロマイやテラマイは、過去の遺物となり、現在では特別な場合以外に使われない。今後の耐性菌との戦いの中で求められるのは、①適切な抗生物質の使用、②耐性病原体の状況把握と対処、③耐性病原体に対する新しい薬剤開発。だが、日常的にできる汚染源に接触しない、うがいと手洗いが原始的だが最良の方法だ!


チュニック

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