2010年11月05日号

モンテグラッパの万年筆


毎日の診療で欠かせない道具の1つに筆記用具がある。患者さんの訴える自覚症状や診察所見などは英語でカルテに表記しているが、訴えの微妙なニュアンスを英語で表現する力量がない。そのために日本語で書かざるを得ないことも多い。おまけに患者さんとの雑談内容や診察時の印象なども一緒に記載する癖があるので記載量が多くなり、筆記用具の書き心地は重要になる。


   私は元々筆圧が強いので、万年筆よりもボールペンが好み。30年前から鉛筆や色鉛筆のメーカーとして始まったカランダッシュ社製で、鉛筆と同じ六角形の「エクリドール」というボールペンが手に馴染んで愛用していた。クリップ部分が破損してジュネーブの本社に送って修理したこともある。


   3年前の還暦の年に長男からのお祝いのプレゼントは万年筆。愛用の筆記用具があり、家での仕事はパソコンのワープロなので筆記用具は使わない。この3年間は私の宝箱の中で眠っていた。久しぶりに宝箱を開けて万年筆を取り出し、試し書きしてみた。なかなかの書き心地…ボルドーという名のインクの色も味がある。ボールペンでは味わえない書き心地に気づいた。この万年筆のメーカーは1912年創業のイタリアのモンテグラッパ、インターネットで調べてみると、この会社の万年筆はヘミングウェイも愛用していたそうだ。「これは毎日の診療で使える!」と思った。


   次の日から、この万年筆を日常診療の筆記用具として使い始めた。クリニックのスタッフからの受けも良いのだが、インクが乾かないうちに次の診療に移るため、インクの滲みが問題とのこと。そこで工夫したのが、診療しているときにインクが乾燥する「間」を取ること。そうすると、1人の患者さんの診療を終え、次の診療に移るときの「間」が取れ、患者さんに向かう気持ちを新たにできることに気づいた。筆記用具が診療スタイルを変えた!


lecca CD

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