2011年03月18日号

褒めたり、宥めたり!


Dさんは一昨年4月に65歳の定年を迎えた男性。40歳代半ばに糖尿病疑いと指摘されたが、自覚症状がないため放置していた。54歳の時に役員に抜擢され、人間ドックの結果、明らかな糖尿病と診断され治療を開始した。


   日常生活指導を受け、薬剤も処方されたが、得意先と宴席が多く、通院も多忙を理由に滞りがちだった。63歳の時に舌のもつれを自覚して脳神経外科病院を受診したところ、軽い脳梗塞と診断された。幸い後遺症もなく軽快したが、糖尿病をコントロールする必要があると言われ、当クリニックを受診。1ヶ月間の平均血糖値を反映するHbA1cは8・6%、治療目標とされる6・5%以下には程遠い。治療を開始して3ヶ月で6・8%まで低下したが、その後は7%前後を行ったり来たり。


   30年ほど前、マウスにブドウ糖負荷を行うと、しっぽの静脈から注射するより、口から飲ませる方がインスリン分泌の多いことが知られていた。当時は謎だったが、後にGIPとGLP―1という小腸粘膜から分泌されるホルモンの作用であることが解明された。これがインクレチンである。だが、インクレチンはDPP―Ⅳという酵素によって数分で分解されてしまう。最近話題の新しい糖尿病治療薬というのは、GLP―1というホルモン類似物質を自己注射する、あるいはDPP―Ⅳの作用を阻害する薬物を服用する方法である。


   Dさん、前から服用している薬剤を半量にしてDPP―Ⅳ阻害剤を処方した。直前のHbA1cは7・2%だったが、1ヶ月後には6・4%まで低下、2ヶ月後に6・0%、空腹時血糖値も168mg/dlから121mg/dlになりDさんを「頑張りましたね」と褒めた。だが、1ヶ月後にHbA1cは6・7%に急上昇、Dさんは「後輩の退職祝いの宴席、油断して、ダメな奴だね」とうなだれる。「そんな時もあるけど、大丈夫」と。当分、褒めたり、宥めたりの生活が続きそうだ!


海の幸 福袋

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