2011年09月16日号

アイシージー


KKY(ケーケーワイ)なる言葉が、新聞やテレビを賑わしたことを思い出しました。YKK(ワイケイケイ)ならファスナーやサッシのあの会社かなと察しがつきますが、KKYとなると思い出すのに少し時聞がかかります。KKYは「場の空気がひどく読めない人のこと」を指すのだそうです。


   さて、先日医学誌でICG(アイシージー)という言葉が目に入りました。ICGは、indocyanine green(インドシアニングリーン)という色素の略称で、もともとは肝臓や心臓の検査薬ですが、今回はICGのもう一つの特徴を上手く利用した、形成外科のICG蛍光染色検査についての話です。


   ICG色素は、光を当てると赤外光を発しますが、この赤外光は多少遮るものがあっても通り抜ける性質があります。たとえばスクリーンで隔てられたあちら側にICG色素で描いた絵を置き、こちら側から光を照射するとその絵の輪郭が分かるといった具合です。


   眼科では、この赤外光を応用したICG赤外蛍光眼底検査を20年以上前から脈絡膜血管を観察する検査法として臨床に応用しています。網膜血管(スクリーンのこちら側)は、簡単に観察することが出来ます。しかし、網膜色素上皮というスクリーンで遮られる脈絡膜血管(あちら側にある)は、こちら側からは観察できません。手前味噌になりますが、当時の私たちの研究グループはICG赤外眼底造影法を開発し、あちら側にある脈絡膜血管をこちら側から診ることができるようにしました。


   昨今、加齢黄斑変性症は日本でも高齢者の失明原因の上位を占めています。この病気は、眼底の中心にある黄斑部に出血や浮腫を起こし、視力障害や中心暗点を生じます。脈絡膜からの新生血管が元凶で、治療には存在場所を正確に知る必要があります。ICG赤外眼底造影法は、この新生血管を正確に見付け出せるため、今や加齢黄斑変性症の診断には定番の検査法になっています。そして、アイシージーはその要となる検査薬なのです。


長渕剛 CD

トラックバックURL:

« どんぐりを拾いに | TOP | No.132 »

[PR]SEO対策済みテンプレート