2011年11月11日号

「ジャーナリズム」の害毒


ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」は、明治の新聞記者で翻訳家でもある黒岩涙香(るいこう)の手によって「噫(ああ)無常」という作品に生まれ変わり、わが国に紹介された。心を改めることで許される道があるというテーマが、人々にとっていかに大きな救いになったか…。ろくに学校に行けなかった散歩人の母親が、「ああ無情」とその主人公の「ジャン・バルジャン」のことを繰り返し教えてくれた記憶がある。


   貧しさのあまりパンを盗んで19年を監獄で過ごし、社会に激しい憎悪を抱いて仮出獄したジャン・バルジャンは、ミリエル司教の家から銀の食器を盗んで官憲につかまった時、「それは差し上げたもの、この銀の燭台も持って行きなさい」と罪をかばってくれた司教に救われ、生まれ変わる決意をする。名前を変え、以降、不幸な人々を救う人となって、やがて市長になる…が、過去を執拗に追うジャベール警部という存在によって、再び逃亡生活に追いやられる…。


   大阪府を東京のような“区制”にする構想をかけて、大阪市長選に立候補した橋下徹前大阪府知事が、文春、新潮、現代など多くの週刊誌の“反橋下キャンペーン”にさらされている。ところが、記事は人物や政治政策批判などではなくて、被差別部落出身などと出自をあげつらう、あまりにも愚劣で低俗な内容。これが日本を代表するジャーナリズムかと愕然とした。


   もとより、橋下前知事に犯罪歴はない。自身の出自については以前から公開していたという。ゴロツキ雑誌などに負けてはいない豪胆さもあるようだが、個々人の生まれをなぶる恐ろしい“報道”のあり方は許されない。世の中に害毒を流す「ジャーナリズム」が、ますます常軌を逸してきたようなのだ。


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