2012年04月06日号

春の記憶


昔、秋田の春…。フキノトウやら赤いシノベやら清々しい緑のカンピロやらが、雪解けを待っていたかのように芽吹いてくる。シノベというのはギシギシの若芽で、独特のぬめりとエグ味が魅力だと、茹でて酢味噌和えや大根おろしと合わせる酢の物に喜ばれた。


   カンピロは、夏に黄色い可憐な花を咲かせるユリ科ワスレグサ属の「カンゾウ(萱草)」(マメ科「甘草」とは別)のこと。反り返った刀のような形をした緑の若葉が左右交互に重なり合って生え、子供たちはそれを草笛にした。その鳴り音から土地の呼び名で“カンピロ”らしいのだが、万葉の時代から「忘れ草」の名で歌によく詠(よ)まれている。その若葉は柔らかく、さっと湯がいて水に浸しおひたしや和え物、フキなどとの煮付にもできるが、春菜らしい特別な味わいはない。


   …で、フキノトウとカンピロと、そしてツクシがもっぱら子供のママゴトの“食材”になった。まだ、4つ5つの頃、隣の家のれっ子(れい子)といつも遊んだ記憶が不意によみがえった。若菜を摘んでは、さびた包丁できざんで割れ皿に盛り食べる真似をする。うるさいくらいのスズメの声と、スーイと飛び交うツバメと、どこまでも明るい春の日差しの中だった…。そのれっ子がいつの間にかいなくなった。嫁姑の諍(いさか)いが続き、隣の長男夫婦はれっ子の手を引いて町に出て行ったのだと、後々に教えられた。


   れっ子はどうしただろう…。あのまぶしい春の日差しが今年は無性に懐かしい。


ICレコーダー キュリオム

トラックバックURL:

« 高血圧治療の疑問④ 血圧の薬に副作用はあるか? | TOP | 益子焼の里 »

[PR]SEO対策済みテンプレート