2012年06月15日号

市販薬に頼るのも?


5年ほど前、50歳代前半の女性が腹痛を訴えて受診した。数年前からみぞおちの不快感や食後の痛みが見られていたが、極度の病院嫌いのため市販薬を服用してしのいできた。しかし、2週間ほど前からは我慢の限界を超え、背部の痛みも出現したために意を決して受診した。腹部の診察を行ったところ、心窩(しんか)部に強い圧痛があり、硬いしこりも触れる。


   検査では、胃の上部から中ほどにかけて全周に深い潰瘍を伴う病変が認められ、スキルス胃癌と診断した。通常は、病理組織検査で良性か悪性かを判断するが、一目見ただけで悪性と判断できる病変のために組織採取を行わずに検査を終了した。患者さんに病状を告げ、紹介状も用意したが、その後の来院はなかった。


   この患者さんが服用していた市販薬はH2遮断剤という種類の薬。胃壁にある塩酸を分泌する細胞の作用を抑えて胃潰瘍を治療させる画期的な薬、1970年代に医師向けに発売され、その効果から胃・十二指腸潰瘍の手術は激減した。1997年には市販薬として認可され発売されたが、認可の際に「胃痛などの自覚症状を軽減する作用があまりにも強力なために、癌などの重大な病気による受診を妨げる」との懸念があった。


   この患者さん以降に同じようにH2遮断剤を服用し、限界まで我慢して受診したケースが2例あった。胃カメラ検査を行うと、胃の中ほどの前側の壁に深い潰瘍性病変が認められ、周囲の性状から悪性(癌)が疑われた。進行胃癌だが、現在では手術による5年生存(治癒)が60%以上と言われている。紹介状を書いて来院を待ったが来院せず、自宅に電話をして留守電にメッセージを残したがなしのつぶて。他の医療機関を受診してくれているのなら、良いのだが…。この例ばかりではなく、極端に我慢強かったり、市販薬でごまかして、医療機関から遠ざかる患者さんがいるのは悲しいことだ!


プラセンタ

トラックバックURL:

« ごまかされてはいけない | TOP | No.141 »

[PR]SEO対策済みテンプレート