2012年11月02日号

レミニセンス現象


Mさんは80歳間近の認知症の男性、6年前に他のグループホーム(GH)から転居してきた。そのGHで他の入居者を「食べ方が汚い」と怒り、大声を出して手を挙げて強制退去。今のGHに移っても、トイレを汚す男性に怒鳴り散らすこともしばしば。だが、彼の怒りの原因にはそれなりの合理的な理屈がある。


   施設の中で最も活動的なMさん、「何とかエネルギーの捌け口を」とスタッフが温泉や催しに連れて行った。だが、帰ってきた直後に「どうだった」と尋ねても、「何処にも行っていない」と答える。ところが、翌日に同じ質問をすると、状況を詳しく話してくれる。不思議な現象と思って、何度か直前の経験と、同じ出来事を1日ほど経過してから尋ねてみると、時間の経過とともに記憶が明瞭となることが分かった。


   この不思議な現象を専門医に質問したが、首を傾けられただけ。ところが、最近読んだ本に、このような現象を心理学でレミニセンスというとの記載を見つけた。この現象は、経験を大脳に記憶として刻むには一定の時間が必要で、この間に他の情報が次々に入り込むと混乱が生じるが、時間の経過とともに情報が整理され、筋道だった記憶が形成される現象とのこと。無意味な綴りに関して10分以内に起こるワード・ホブランド効果と意味のある事象に関して数日以内に起こるバラード・ウィリアムズ効果があるらしい。


   Mさんの場合、後者のバラード・ウィリアムズ効果と思われる。介護スタッフにこの話をしたところ、彼の怒りの大部分は明瞭な記憶が形成される前に、同じような事象に何度も遭遇した時に起こることが判明。暴力沙汰の直後に注意するよりも、1日ほど経過してから説得することを繰り返して学習させるのが効果的。この介護方針が奏功したのか加齢による活動性の低下が原因なのか、めっきり大人しくなったMさん、往診のたびに「おう、藪医者!」と声をかけてくれる!


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