2013年03月29日号

「欲」


食欲、金銭欲、物欲、色欲、権力欲、名誉欲、睡眠欲…人というものは欲のかたまりだ。欲をまるで無くしてしまったら、生きてはいけない、子孫もできないで、それは困ったことになるから、欲は適度に抑えましょう、必要以上にむさぼり求める貪欲さを捨ててしまえば、いろんな苦しみが少なくなります…と説いたのがお釈迦様(ブッダ)なのだそうだ。で、さらに、怒り憎む心や行動=「瞋恚」(しんに)、真理に対する無知でおろかな心と行動=「痴」(ち=愚癡…ぐち…ともいう)をあわせて、この3つ「貪瞋痴」(とんじんち)を無くする努力をすれば、幸せに生きられると教える。ただ、無理はするな…とも言う。糸を強く張り過ぎた琴はすぐ切れてしまう、弱く張ればいい音がしない、ほどほどに…と説いている。気張り過ぎなさんなと、お釈迦様はなかなか粋なのだ…。


   それでも、欲にまみれて、人は迷う。物欲もあれば色欲もある、何で言うことを聞かないんだという権力欲もあれば、よく思われたい名誉欲もある。散歩人などは、いつまでたってもその中でうろうろしている。見栄を張ったりいい振りしたり、身勝手なことをしたり言ったり、思い通りにならないと怒ってみたり悲しんでみたり、皮肉でものを見たり悪口を言ったり、自分を棚に上げては人を恨んでみたり……で、欲に足をとられて決まって五里霧中の迷路に迷い込んでしまうのだ。気持ちが荒れて、何がいいのか悪いのかわからなくなる。こうなるとどうも苦しいのである…。


   人間の成長、発達を研究して今の基礎を築いた故・田中昌人京都大学名誉教授は、生まれて6~7ヵ月の乳児の動きの特徴を…泣いてもあやされると笑顔に戻ったり、体を曲げても真っ直ぐに戻して次の行動に移るなど、心身ともに「立ち直り」反応が出る。動きのつど、必ず正面をとらえ、それから次の行動へと動く…と解説している。一度必ず正面を向く、右と左の真ん中の線、いわば正中(せいちゅう)をとらえるというこの動きは、乳児後半期に向かっての飛躍的な発達に重要な意味を持つことになるのだという。


   もしかして、大人になっても心と体の基本的な動きは同じではないのかという気がした。泣いて笑ってすっきりしたり、趣味に浸(ひた)ったり…あの手この手で「立ち直り」にあがく…。昔の人は豊かな自然の中を一足ずつ歩いて、山や木や、花や鳥や雲と話をしながら、正中をとらえ正気を取り戻せたのかも知れない。身を焼く「欲」と向き合いながら…。


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