2013年04月26日号

温かい支え


「米っこ、まだあったが?」……久しぶりにふるさとの秋田に電話したら、電話口に出た義姉が、開口一番そう言った。家を出てからいつの間にか40年経ったのだが、いまだに、たまの電話に「米っこあるが?」と聞いてくる。「生活に困っているのではないか?」…そんな心配が受話器の向こう側から伝わってくるのだった。


   稲作農家にとって米は現金と同じで、そうそう甘えてばかりいられないと思う半面、送られてくる荷物には故郷の空気も一緒に詰まっているようで、開く時のうれしさは何とも言いようのないものだった。米の袋の隙間を埋めるように詰め込まれたりんごやなしの2つ3つ、好物の食べ物や菓子のあれやこれや、そして、いくばくかの金をはさんだ簡単な手紙…。開いているうちに、ホーッとため息が出て、素直なゆるやかな心持ちになってゆく…。


   「米と味噌と醤油があれば、何とか生きてゆける」という気が家を出た時からあって、それを腹の底に据えて生きてきた。安アパートの共同炊事場で、醤油を回し入れただけの飯を炊けば、それだけで炊き込み飯のような豪勢な香りになるのだった。時に、卵1つ、納豆1パック、豆腐1丁のありがたさが身に沁みた。だから、安給料を飲み代などに使い果たしていた時代は、給料日にとりあえず醤油と味噌を買っておくことにしていた。


   あとは、送ってもらった米がある…ありがたいことに、そんな支えがあって生きて来れたのだった。


キッズ・ベビー・マタニティ

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