2013年05月17日号

背番号3


叔父が、緑色のフェルト地を大きく「3」にカットして、チョッキの背中に縫い付けてくれた。まだ4、5歳だったろう散歩人は、背番号「3」がうれしくて、遊びに出る時は必ずそれを着て走り回ったのだった。


   風呂敷のマントを着ければ月光仮面になれた。手ぬぐいをかぶれば怪傑ハリマオになって、刀の棒切れを背中に背負えば忍者になれた。背番号3を付ければナガシマだ。ラジオしかなかったから、今のように活躍の様子が逐一わかるわけではないのだが、幼な心になぜか巨人の長嶋と、横綱・朝潮(濃い眉と胸毛が人気だった3代目朝潮太郎の方)のファンだった。四角や円形のパッチ(めんこ)で顔は知っていた。どちらも、気はやさしくて、そして誠実な人柄の“正義の味方”だった…。


   5月5日、長嶋茂雄とその弟子・松井秀喜が、2人そろって国民栄誉賞を受賞した。贈呈・表彰式は、特例として東京ドームで、松井の引退式を兼ねて行われた。セレモニーで、背番号55のジャイアンツのユニフォームを着た松井がマウンドに上がり、背番号3を付けた長嶋がバッターボックスに立った。松井が投げたボールは山なりに大きく内角高めに外れた。しかし、2004年に発症した脳梗塞で右手が使えない長嶋は、左手一本で果敢にバットを振った。本当に打ちにいったのだ。「気持ちが高ぶっていて、“さあ、打とう。打ってやるぞ!”という気持ちがあった。ボールが顔の辺りに来て打てなかったけど、いい球だったら打っていたと思う」(5月6日付スポニチ)


   ファイトの塊(かたまり)のようだった往年のナガシマの姿がそこにあった。日本国中がまた勇気を貰った…。


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