2013年06月07日号

記憶と認知の違い!


90歳になるT婆ちゃん、娘さんと一緒に受診した。今年4月に病院を受診、心不全との診断で2ヶ月間入院、退院後に物忘れが激しくなったと訴えた。物忘れの内容を尋ねると、財布の残金を忘れてしまう、物を置き忘れる、訪ねてきた友人の名前が出てこないと具体的に答えてくれる。ここまでの問診でアルツハイマー病など病的な物忘れでないことが予測された。


   次に簡単な認知症診断のテストを試みた。誕生日や年齢は正確に答えたが、今日の日付や曜日は分からないと。季節は?と尋ねたら、即座に春と。3つの言葉を覚えてもらい、数秒後に復唱してもらう。2つは即座に、もう1つはちょっと考えて正確に答えた。次に世間話を数分間してから、先ほどの言葉を尋ねると、さっきは最後に答えた言葉が最初に、次に他の2つを正確に答えてくれた。


   記憶は、数秒単位の瞬時記憶、数分から数ヶ月単位の短期記憶、それ以前の遠隔記憶という3つに分類される。加齢とともに短期記憶の喪失が遠い方から近くへと進み、相対的に遠隔記憶の明瞭さが際立つ。この現象は誰にでも起こり、「ボケが始まった?」と自覚したり、家族からも疑われたりする。認知とは、五感から入ってくる情報を過去の記憶に照らし合わせて的確に判断し、次の行動につなげる能力である。外から入ってくる情報を正確に判断できなくなった状態が認知症だ。


   T婆ちゃんの場合、年齢相応に短期記憶が減退しているものの、財布の中の残金と不釣り合いな買物はしないし、置き忘れは単純。病的な物忘れは箪笥の奥の下着に包んだり、正常人には予想もできない場所に「隠す」ことが多い。また、名前の出てこない友人も、自分との関係を正確に把握。これが正常な老化か?と考えていると、馴染客?のJさんが、受付や処置室で「眼鏡を置き忘れた」と捜索中。誰もが別の眼鏡?と思っていたら…突然にJさん、「あれ、かけていたわ」と!


クロックス

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