2014年02月14日号

嘘の苦しみ


 被爆2世で、少年期から発症した聴覚障害で聴力を失った過酷な境遇にも関わらず名曲を次々と生み出す驚異の作曲家・佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏(50歳)…のはずだった。しかし、“現代のベートーベン”とまで称賛された評価は、桐朋(とうほう)学園大学で非常勤講師を務める新垣隆氏(43歳)という、いわば本当の作曲者が名乗り出たことで、一夜にして“詐欺師”と糾弾されるまでに転落した…。


 新垣さんは、これまで18年間にわたり20曲以上を代作してきたという。現代音楽では知られた作曲家でピアニスト。その作品の1つ「交響曲第1番HIROSHIMA(ヒロシマ)」は楽曲として高く評価され、多くの人々の心を打った。「バイオリンのためのソナチネ」という曲は、フィギュアスケートの髙橋大輔選手がソチオリンピックで演技のテーマ曲に使うほどの魅力をたたえていた。この曲は義手でバイオリンを弾いているというある女性に(形の上では佐村河内氏が)贈った曲だったが、実は新垣さんが幼稚園の頃からこの女性の伴奏などをしていた経緯があるという。そういう事情から、髙橋大輔選手は真実を知った後もこの曲への愛着が強く、この曲でオリンピックに臨むことを「とても楽しみ」とコメントしているのだと報道されている。


 食えない時代、もの書きも含めて他人の代作をするゴーストライター的な行為は、誰でもやっている仕事の1つという認識で、白状すれば昔の散歩人などにも罪悪感はほとんどなかった。だけれど、それで人々に迷惑をかけるとわかった途端、そこに「ウソ」の意識が強まる。軽い気持ちで始まったのが、思わぬ脚光を浴びてしまうことになって新垣氏だけではない、テレビ番組などにも登場して“演技”を続けた佐村河内という人はそれにも増して、嘘に嘘をぬり重ねる地獄の苦しみを味わい続けていたのではないかと、おかしな同情もしてしまった。


 自覚しながらも平気でウソをまき散らす評論家や政治家や学者やジャーナリストや…そんな卑しい連中に比べたら…。


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