2014年02月21日号

癌で死ぬということ!


 Tさんは87歳の男性、4、5年前に奥様を亡くし、息子さん一家と生活している。10数年前から当クリニックで高血圧症のために治療していて、年2回定期的に検査を受けている。今回の検査で貧血傾向が観察されたため、「貧血の原因を詳しく調べる必要がある」と説明したが、「妻にも先立たれ、自分も長生きし過ぎたので検査は不要」とのこと。


 何とか説得して、当クリニックで可能な検査を受けてもらったところ、便中の血液反応が強陽性との結果で大腸癌が疑われた。「今なら体力もあるし何らかの対策がある」と説明したが、精密検査を頑なに拒否。消化器専門の提携病院を紹介したが、最終結論は検査を受けずに経過観察とのこと。それから1ヶ月ほど後、便秘を訴えて受診。腹部レントゲン検査で腸閉塞の所見が見られた。当クリニックでは対処の術がないため、前記の専門病院を紹介した。


 平均寿命の延長により、普通に日常生活を送っている80歳以上の人に癌が発見される頻度も増えているが、麻酔や手術技術の発達によって、このような高齢者でも手術適応とされる症例も飛躍的に増加している。Tさんの場合には横行結腸とS状結腸に腫瘍が見つかり、摘出手術を受けて無事に退院した。


 「癌で死ぬ」と一言で言っても、脳卒中や心筋梗塞でポックリとか、枯れ木が朽ちるようにとかいう訳にはいかないのが現実。これを知っている私たち医師は常に患者さんにとってベターな選択を勧めているが、なかなか理解されないことが多い。Tさんの経過についての情報提供は提携病院から届いているのだが、退院してから3週間も過ぎているのにTさんの受診はない。スタッフと「電話でもしようか?」と話をしていた矢先、Tさんがクリニックに現れた。それを発見した看護師が、思わずTさんに抱きついたそうだ。診察室に入ってTさんが一言、「先生、癌で死ぬって簡単にはいかないものですね」と!


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