2014年05月16日号

高血圧の基準はどこへ…


 まんまる新聞を配達してくれていた主婦のSさんが、脳卒中で突然倒れたのは7年前、41歳の時だった。幸いすぐ脳外科に運ばれ一命を取り留めた。後遺症が残ったが、リハビリで今は日常生活に大きな支障がないまでに回復している。当時の血圧は上が130前後。「ちょっと高め」と言われる程度だったという。


 4月4日に人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)が共同で公表した健康新基準値(「新たな検診の基本検査の基準範囲」)が波紋を広げている。これは人間ドック受診者から“超健康人”として選び出された人の検査値から割り出した基準で、血圧や脂質、血糖ほかの新たな指標を作成したもの。例えば血圧は、上(収縮期)が88~147、下(拡張期)が51~94は健康の範囲内だとしている。


 これを週刊誌がセンセーショナルに取り上げた。《超いい加減な健康基準値、大変更!…血圧は200でもセーフ!血糖値は100でもアウト》(週刊現代)などと、“今までの基準値は嘘”“医者と製薬会社の陰謀”といった不信感をあおるニュアンスが多いものだから、日々の医療に向き合う現場は困惑気味。憤りすら覚えるという医師も少なくない。


 日本高血圧学会による正常血圧の基準は上130未満、下85未満で、上130、下85を超えたら要注意の正常高値血圧となり、高血圧管理対象は上が140以上、下が90以上(高血圧治療ガイドライン2014)。脳卒中、心疾患をはじめ取り返しのつかない結果につながるのが高血圧だ。「動脈硬化は元には戻らない。患者の将来を考えた指導・治療のための重要な基準です」「血圧は絶えず変動している。診察の時に高く出る白衣高血圧などもあり、毎日の家庭血圧が大切になる。ドック受診時の一時の測定値でまとめた数値は無責任で危険」などと江別・厚別の地元医師も強く指摘する。


 上が130前後の血圧だったSさんの脳卒中は、予想だにしない出来事だった。基準が緩くなれば要治療人口が減るから、医療費を抑えたい国や健保連は喜ぶかも知れないが、庶民の健康リスクは高まる。今の騒動はその巧妙な下地作りかも…。


黒執事 CD

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