2014年05月30日号

忘れな草


 連休を過ぎた頃、家の前の道端に忘れな草(勿忘草=わすれなぐさ)が咲いているのを見て、何だかずいぶんうれしくなった=写真=。不思議なくらいに気持ちが和(なご)んだのだった。いつもの年と同じように、ほつほつとうす紫の花をつけている。たまに、淡いピンクの色も混じる。忘れな草はムラサキ科ワスレナグサ属の花の総称だそうで、明治期以降、ヨーロッパ原産の帰化植物が野生化して広まったのと、ほとんど同じ花姿で自生する日本在来種の「エゾムラサキ」というのもあるのだという。家の前に咲くのが、そのどちらかはわからないけど、エゾムラサキは深い山に咲くというから、どうもヨーロッパ原産の方ではないかと思っている。いずれにしても忘れな草というロマンチックな呼び名の花には違いない…。


 忘れな草という花の名は「私を忘れないで…」という意味の、英語名(フォーゲット・ミー・ノット)やドイツ語名の訳で、少し悲しいヨーロッパの伝説が由来しているのだそうだ。――恋人ゼルダのために川岸のこの花を摘もうとした騎士ルドルフが川に落ち、波間に消える前に「私を忘れないで」と、この草花を恋人に投げよこした。彼女はこの花を生涯髪にさし、この可憐な花を「忘れな草」と呼ぶようになった――。本当のところこの物語より、忘れな草を見て思い出すのは、小さい頃にまわりにいた、アップリケを付けた毛糸のカーディガンや丸襟のブラウスなんかを着た純朴な少女たちなのだが、控えめで愛らしい花姿は、花の名そのままにいじらしくて愛らしくて…毎年毎年この花を見つけるたびに、胸がときめいてしまうのだ。


 もうひとつ、この季節でうれしいのは、日増しに濃くなる緑の中に、鮮やかな黄色を敷き詰めてタンポポが咲く風景だったりする。この初夏の情景に異様なほどの喜びが感じられて、ぐっときてしまうこともあるのは、年のせいかも知れない。緑と黄のくっきりしたコントラストの爽快な美しさが、生きる命の力強さを信じさせてくれる。そんな感じなのだ。


 野や道端に咲く小さな草花が、これから次々と咲き出す。踊子草やカタバミやハコベやゲンノショウコや、夏にかけてはツユクサも咲いて…。庭に咲く花々もいいけれど、足もとにひっそりと咲く極小の花々もまた、輝くように咲き誇っている。


ビクター Everio エブリオ GZ-MG330

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